5月7日、8日上映のドキュメンタリー映画「発酵する民」、平野隆章監督インタビュー
ドキュメンタリー映画「発酵する民」の特別上映会を5月7日と8日に行います。「発酵する民」は、東日本大震災のあと、鎌倉で脱原発パレードを行った女性たちが、のちに「イマジン盆踊り部」を結成。生活から生まれた唄と踊りが、人々を繋いでいく様子を7年間追った作品です。特別上映会を行うにあたり、監督の平野隆章さんにお話を伺いました。
横須賀出身の平野監督。東日本大震災の際、「神奈川も結構揺れて、この世の終わりというムードが漂っていました。原発事故もあり、不確かな情報が行きかう中、自分たちも被災者という感覚がありました。移住する人も結構いましたし」と振り返ります。そんな中、WEBニュースの取材で、脱原発パレードの女性たちと出会います。「最初は面白い女性たちがいるなぁと。その後、取材抜きで会いに行ったら、『盆踊り部を作った』と聞き、楽しそうに活動している姿を見ているうちに、僕の心の深くに、何かこう届いてくるものがあって…。僕自身、震災や原発のことをきっかけに、これから自分の生活をどう変えていこうか考えていた時期でもあり、彼女たちがどうやって暮らしていくのかを長い期間で見たいと思ったのが始まりでした」。
鎌倉は、海と山に囲まれ、数々の神社仏閣が並ぶ古都。観光客がたくさん訪れるイメージです。その一方で、映画に登場する人たちのように、長い歴史の中で育まれた豊かな文化をベースに、丁寧に暮らしている人たちも多くいます。平野監督も鎌倉で暮らす人々に惹かれ、撮影の途中から移住。「足るを知るというか、お金をかけずに暮らしを楽しんでいる人が鎌倉には多い。震災のこととか、社会的なことも話しやすく、風通しの良さを感じます」。
作品では、歴史ある酒蔵の酒造り、一軒家カフェでの味噌作りなど、「発酵」の世界に触れています。「撮影しながら、目に見えない微生物の働きが自分たちの暮らしにも関係しているのを感じました。そして、『発酵』というものから変わり続けることを学びました」。さらに、発酵という小さな視点だけでなく、太陽系の惑星の動きを時空間の地図として表した「地球暦」という宇宙レベルの視点も作品には登場。さまざまな視点を暮らしの中に取り込みながら、「イマジン盆踊り部」の女性たちは唄や踊りを創り出していきます。スクリーンに映し出される彼女たちはとにかく楽しそうで、自然と人々が集まり、踊りの輪が広がっていきます。「震災や原発の問題は今もなお解決はしていません。でも、盆踊り部のように自分たちの生活レベルで少しずつ変化していくこと、そこから新しいものが生まれていくことも大事だと思いました」。原発事故で福島の取材をしていた平野監督、今も定期的に福島へ取材に行っているそう。事故の中心部からの目線、少し離れたところからの目線、どちらも持ちあわせている平野監督だから撮ることができた「発酵する民」だったのではないかと思います。
夜の空に浮かぶ月、暗がりで唄い踊る女性たち。最後のシーンはとても印象的で、そこから生きていることへの感謝や豊かさが感じられます。「今もコロナ禍で世の中が暗い感じになっていますよね。でも、そんな暗い社会の中でも、彼女たちは唄ったり踊ったりしていくのだろうなと思うし、僕はそういう人たちがいることをこれからも記録していきたいと思います」。
人と出会い、人の人生に耳を傾けるのが好きだという平野監督。5月7日(金)、8日(土)の上映会にも来札してくださいます。最後に、「手作りの味噌を作るように作ってきた小さな映画です。全国各地のミニシアターや、その土地に根差したコミュニティーを持っている方たちのところなどで上映できたらと思います。そしてできる限り、上映会には足を運びたいと思っています。盆踊り部のように3.11がきっかけで活動を始めた方たちは全国各地にいらっしゃると思うので、各地の小さな変化も知りたいです」とメッセージをいただきました。
<「発酵する民」特別上映会>
日時/5月7日(金)18時30分~20時30分
5月8日(土)9時30分~11時30分
料金/前売り大人1800円(当日2000円)
前売り小中高生 1300円(当日1500円)
※玄米甘酒を使ったドリンク付き
※未就学児は無料
会場/Agt2階(札幌市中央区南16条西4丁目1-10)
予約/Agt店頭にて予約を。電話、メールでの予約受付も承ります。
※駐車場の台数に限りがあります。可能な方は公共交通機関をご利用の上、お越しいただきますようご協力をお願いします。