Agtウォールギャラリーインタビュー すずきももさん
2019年10月18日(金)~23日(水)、Agt2階のウォールギャラリーで行われる「すずきもも絵本原画展 はたけのごちそうなーんだ?くだもの」。その原画展に先立ち、作者のすずきももさんにお話を伺いました。
食いしん坊のももさんが描く「はたけのごちそう」
札幌でイラストレーター、絵本作家として活躍しているすずきももさん。食べること、旅することが大好きで、スローフードさっぽろの代表やだい好きパンの会の主宰も務められています。食に関する造詣が深く、「おいしい大地、北海道!」(イースト・プレス)といった著書も多数。絵本でも「はたけのごちそうなーんだ?」シリーズ(アリス館)を発表しています。
「あきとふゆ はたけのごちそうなーんだ?」「はるとなつ はたけのごちそうなーんだ?」に続いて、今年の4月末に発売されたのがシリーズ3作目の「はたけのごちそうなーんだ? くだもの」です。このシリーズを出すきっかけを尋ねると、「もともとスローフードの活動をやっていて、漠然といつか食に関係ある絵本を出したいと思っていました。ちょうど、ホクレンさんなどで採用してもらったこれまでの私の作品を見たという編集者から声がかかったのが最初ですね」とももさん。当初は、1冊だけ出す予定だったのだそう。「でも、クイズ形式にして、畑の様子、成長の様子を入れていったら、1冊でせいぜい7アイテムが限界。それなら、根菜となりものに分けて作ろうとなり、あきとふゆ、はるとなつの2冊を作ることになりました」。お店で手にする野菜たちが、どんな風に育っていくのかを知らない人は大人も子どもも案外多く、発見がたくさんある絵本になっています。かたい雰囲気の図鑑と違って、ももさんの絵やリズムの良い言葉が親しみやすいのもポイントです。
シリーズ3作目は「くだもの」がテーマ
好評だった2冊に続いて、次はくだもの編を制作することに。「季節が偏らないように7アイテムのくだものを決めるのは難しかったです。地域差もありますし」とももさん。春はいちご、夏はすいか、ぶどう、秋はりんご、冬はみかんという風に分け、りんごとなしなど似たものは外していき、木から実が下がるもの、つるになるものなどもバランスよく入るように考えていったそう。
くだものはとても身近で、親しみのある食べ物ですが、「はたけのごちそうなーんだ? くだもの」のページをめくると、野菜以上に実がなっている様子や成長過程を見たことがないかも…ということに気付かされます。ももさんも「野菜よりも知らないことが多くて、くだものは奥が深いと思いました」と振り返ります。バナナの成長過程など、見る機会のないシーンもたくさんありますし、いろいろなくだものの秘密も描かれていて、前の2冊以上に驚きと発見の連続です。
くりはくだもの? その理由は…
本作の中で、気になったのが「くり」。そういえば、くりって木の実?くだもの?野菜?と疑問が…。「くだものにはいろいろな定義があるんです」とももさん。木の実で生で食べられる甘いもの、木の実で生で食べられないが甘くてお菓子の材料にも使われるもの、スイカなど野菜にも分類されるものとあり、この絵本ではこれらの定義をすべて「くだもの」として構成したのだそう。なので、「生で食べられないが甘くてお菓子の材料にも使われるもの」として、くりが仲間に入っているのでした。「日本の伝統的なものをどうしても入れたかった」というももさんの想いもそこにはありました。
このシリーズでおなじみとなっているのが、紹介した作物を使ったレシピの紹介。今回も、美味しそうなくだもののレシピが載っています。絵本を読んだあと、作ってみたくなるものばかりです。
子どもたちに参加してもらえるワークショップ
近年、子どもたちと関わることが増えていて、これからもコンスタントにいろいろな絵本を作っていきたいと話すももさん。「いつか子どもたちと畑へ行って、みんなで収穫して、絵を描いて、収穫したものを料理して食べるというイベントとかやりたいですね」と話します。
今回、畑には行けませんが、ももさんと一緒に野菜スタンプでマイバッグやマイハンカチを作るワークショップ、パタパタ絵本を作るワークショップも開催します。詳しくはこちらとこちらからチェックを。
また、18日(金)18時~は原画展のオープニングパーティーも開催します。札幌にあるファームまつもとの松本千里さんとのトークショーもあります。詳しくはこちらから。
原画展開催中は、ももさんのオリジナルグッズの販売もありますよ。
<取材・文/中村昭子>