「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第9話

コーヒーは甘さで終わるもの

 

コーヒーは、甘さで終わるものだと思っています。
いくら香りが印象的でも、最後に甘さが残らなければ、人は自然と次の一口に手が伸びなくなってしまう。

 

では、その「甘さ」を感じられない理由は何なのか。いくつかの要因が考えられます。

 

まずは、豆そのものの品質。
そして、生産地で行われる精製や発酵といった処理の違い。
さらに、焙煎に向き合う力量。

 

これらは、コーヒーがお客様のもとへ届く前に、すでに大部分が形づくられている要素でもあります。
後から手を加えて、簡単に変えられるものばかりではありません。

 

一方で、抽出──つまり淹れ方によって、味わいが変わることも確かにあります。
バリスタの技術が問われる場面もあるでしょう。

 

ただ、ここでは、ご自宅で愉しむコーヒーを前提に考えたい。
毎回、正確なレシピを守らなくてもいい。
少し雑になってしまう日があってもいい。

 

それでも、
「おいしいね」
と感じてもらえるコーヒーであること。

 

好みのいつもの淹れ方で、ささっと淹れても。
ボタンひとつのコーヒーメーカーで淹れても。
それでちゃんと、「おいしい」と思えることを、大切にしています。

 

僕がが大切にしている甘さは、一口目だけで終わるものではありません。

 

口の中に、ゆっくりと広がり、飲み進めるほどに感じられる甘さ。
時間が経ち、温度が下がっていくにつれて、むしろ輪郭がはっきりしてくる、そんな甘さの余韻です。
それは、コーヒー豆そのものが持っている甘さだと思っています。

 

その甘さは、飲み疲れがしない。
気づいたら、カップが空っぽになっている。

 

たとえ、「甘い」と言葉で説明できなかったとしても、次の一口が止まらないなら、それが、もう答えなのだと思っています。

 

(文と写真:横井 力)

 

☆ 次回は3/10(火)の投稿です。