「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第14話

雪の下で

 

草木の芽は、雪の下で春を待つ。

 

踏まれても、すぐに顔を出そうとはしない。
土の中で、静かに準備を続けている。

 

見える時間よりも、見えない時間のほうが、ずっと長い。
やがて春が来れば、一気に咲く花もある。

 

けれど、すぐに散る花もあれば、ゆっくりと幹を太くしていく草木もある。

 

どちらが正しいわけでもない。
雪に覆われているときであっても、春は必ず来ると知っているから。

 

その時がいつ始まってもいいように、絶え間なく、静かに準備は続く。
気づかれようと、気づかれまいと。

 

声を張らなくてもいい。
評価されなくてもいい。

 

私は、誰かの幸せを静かに願える側でいたい。

 

すべての人に届かなくていい。ただ、必要な人の春に、そっと間に合えばいい。


草木のように。

 

(文:横井 力)

 

☆ 次回は3/24(火)の投稿です。