「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第25話

心を開くということは「安心の正体」を知ること

 

安心とは、何でしょうか。

 

安全な場所にいること。
リスクが少ないこと。
条件が整っていること。
そういった“物理的な安心”も、もちろん大切です。

 

でも、人が心を開くときの安心は、少し違うところにある気がしています。

 

この人なら、大丈夫。
そう感じたとき、人は自然と、力を抜きます。

 

うまく説明できなくてもいい。
完璧でなくてもいい。
そう思えた瞬間に、少しだけ、心がほどける。

 

どんなに環境が整っていても、どこかに緊張が残る場所では、心は開かない。
逆に、多少不完全でも、安心できる人がいる場所では、不思議と前に進める。

 

今は、おいしいものも、良いものも、世の中にあふれています。
原料も、技術も、環境も、年々整ってきている。

 

それでも、“また来たい”と思える場所は、そんなに多くないのかもしれません。

 

心地よさは、スペックではつくれない。
そこにいる人の在り方や、流れている空気の中で、ゆっくりと育まれていくものだと思います。

 

だからこそ、安心とは、整えるものではなく、にじみ出るもの。

 

人は、安心を感じたときにだけ、本当の意味で心を開く。

 

そのことを忘れずに、今日もまた、目の前の一人に向き合っていきたいと思います。

 

(文と写真:横井 力)