「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第1話
声をかけられた日

最初にオーナーである奥村社長からかけられた言葉は、少し意外なものでした。
「横井さんが、次にやりたいことが見つかるまでの間、Agtでコーヒーのことはもちろん、これまでの経験や、マネジメントのことを若い皆に伝えてもらえたらと思っています。」
仕事の内容というより、立ち位置を示された、そんな印象でした。
当時の自分は、何か次の目標がはっきり見えていたわけではありません。
どこかに向かって走っている途中、というより、立ち止まりながら、次を探している時間でした。
だからこそ、「教えてほしい」「引っ張ってほしい」ではなく、「伝えてほしい」と言われたことが、不思議と腑に落ちました。
何かを教え込む役割でもなく、正解を示す立場でもない。
一緒に考えながら、横を歩くような感覚。
その距離感が、Agtらしいなと思ったのを覚えています。
しばらくしてから、ひとつ気づいたことがありました。
奥村社長は、実はコーヒーを飲めません。それなのに、なぜコーヒー事業を始めようとしていたのか。
その理由を、後の社内の報告会の場で知ることになります。
スタッフの中に、コーヒーが好きで、いつか本格的に関わってみたいと願っている人がいる。
その思いを、「場」として実現できないかと考えていた、という話でした。
事業を先に置くのではなく、人の願いを、先に見る。
Agtという場所の性格が、そのとき少しだけ見えた気がしました。
振り返ると、不思議な重なりもあります。
横井珈琲とAgtは、同じ会計事務所に支えられていました。
そしてAgtでは、開業以来24年間、オリジナルブレンドを任され続けてきた時間があります。
あとから並べてみれば、説明はできるのかもしれません。
けれど当時は、ただ静かに線がつながっていくような感覚でした。
これは、本当に偶然だったのでしょうか。
(文:横井 力)
☆ 次回は2/9(月)の投稿です。

