「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第2話
合わないはずだった、という前提

正直に言えば、植物性のバターサンドに期待をしたことはありませんでした。
おいしさも、コーヒーと重なったときの広がりも、そこにマリアージュを感じた記憶がなかったからです。
これまでの経験の中で、コーヒーとバターサンドの相性は、決して簡単なものではありませんでした。
とくに動物性の要素がなければ、味が重なり合うことはない。そう思っていました。
だからこそ、マルデバターサンドを口にしたとき、少し戸惑いました。
理由を探すより先に、ただ「おいしい」と感じてしまったからです。
軽い、とか。やさしい、とか。そういう言葉が先に浮かぶのではなく、まず、味として成立している。その感覚がありました。
そして、コーヒーを口に含んだとき、さらに戸惑いました。
合うはずがない、と思っていたものが、ぶつかることなく、自然に重なったからです。
強く主張するわけでもなく、どちらかが勝つわけでもない。ただ、同じ方向を向いているような感覚でした。
あとから知ったことですが、マルデバターサンドは、原材料をすべて植物性のもので構成しています。
玄米乳酸菌を種菌にした自家製の豆乳ヨーグルト。
そこにココナッツオイルやカカオバターを加え、ホワイトチョコレートのようなコクを表現していること。
日本酒に漬け込んだオーガニックレーズンを使っていること。
お米を原料とし、発酵させて造られた日本酒を選んでいること。
サブレ生地は、無農薬・無化学肥料で育てられた米の米粉を100%使用し、あえて、しっとりとした食感に仕上げていること。
けれど、それらは「理由」ではなく、あとから静かに腑に落ちていった答え合わせのようなものでした。
先にあったのは、理屈ではなく、体験でした。ビーガンだから。植物性だから。身体にいいから。
そうした前置きがなくても、マルデバターサンドは、無条件においしかった。
そして、合うはずがないと思っていたコーヒーと、きれいに重なった。
商品開発担当の積木さんがつくるマルデバターサンドは、一般的に想像される「植物性のスイーツ」とは、少し違っていました。それは、工夫がすごいから、でもなく、思想が立派だから、でもなく。
ただ、味として成立していた。
それだけのことだったのだと思います。
この体験を通して、自分の中にあった前提が、静かにひとつ、外れました。
〇〇だからおいしい、ではなく。理由を探す前に、もう答えが出ている。
そんなペアリングが、確かに、そこにありました。
(文と写真:横井 力)
☆ 次回は2/12(木)の投稿です。

