「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第7話
離れようとしても、離れなかったもの

宮の森にあった珈琲屋、羅賀丸を、ボランティアで4年3ヶ月と10日、手伝っていました。
結婚を機に、一度、きちんと区切りをつけようと思い、お店から離れました。未練、という言葉は少し違います。
離れてみて、自分は何が好きだったのかが、はじめて分かった気がしたんです。
コーヒーそのものが好きなのか。
人と触れ合うことが好きなのか。
接客が好きなのか。
考えてみると、「サービスすること」が義務ではなく、ただただ、好きだったのだと思います。
その頃の僕にとって、その手段が喫茶店のサービスでした。
今で言う「カフェ」がまだ一般的ではなかった時代。
スターバックスも、まだ日本にはありませんでした。
札幌パルコにスターバックスが出店したのが2001年の4月。
一度は、コーヒーの世界から離れました。
けれど、暮らしの中にある「一杯のコーヒー」は、いつも変わらず、いつもそばにありました。
外で飲むコーヒーよりも、自分で淹れた一杯のほうが、なぜか満足感がありました。
家を訪れる友人や知人にコーヒーを出すと、口を揃えて「おいしい」と言われる。
社交辞令だろうな、と思いながらも、悪い気はしません。
でも、それが本当なのかどうかは、正直、分かっていませんでした。
羅賀丸を辞めるとき。
常連さんのお一人が、お帰りの際、ふと、こんなことを言ってくれました。
「横井さんが淹れるコーヒー、おいしかったんですよ」
(文と写真:横井 力)
☆ 次回は3/4(水)の投稿です。

