「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第10話

日本人は後味にうるさい

 

これは体験的で、少し抽象的な話かもしれません。

 

カップ・オブ・エクセレンスの国際品評会に参加した中で、いつも感じていたことがあります。
日本人は、世界に誇る繊細な味覚を持っていて、とりわけ「後味」に対する評価が、とても厳しい。

 

一つのセッションは約50分。
その時間ぎりぎりまでカップに向き合い、最後まで粘っているのは、日本人の審査員が多かった。

 

一方で、欧米の審査員は、比較的早い段階で判断を下し、席を立つ姿もよく見かけました。
そこには、食生活の違いが大きく影響しているように感じています。

 

アメリカは、全体的に強い味わいを好む傾向がある。
ドーナツやチューイングガムを思い浮かべると、なんとなく想像がつくかもしれません。
ヨーロッパは、酸に対する許容が広く、ワイン文化の影響が大きいように思いました。

 

実際、品評会後のディスカッションでも、後味について言及するのは、日本人の審査員が多かった印象があります。

 

ちなみに、僕自身も、かなりうるさい(笑)。
香りよりも、どうしても後味と甘さを見てしまう。

 

そして、いちばん大事にしているのは、液体がきれいかどうか。
これも結局、後味と深くつながっています。

 

札幌駅の地下にお店があった頃のことです。
特にご婦人の方に、後味に敏感な方が多かったことを、今でもよく覚えています。

 

ボキャブラリーは決して多くないけれど、「おいしいもの」をきちんとキャッチする味覚をお持ちで、後味に対して、とても正直でした。
言葉として明確に語られることは少なくても、その感覚は、確かに伝わってきた。
今では、それは偶然ではなかったと、確信しています。

 

後味に残る酸味や苦みを、苦手と感じる方は、実はとても多い。

 

後味というと、静かで目立たない印象がありますが、コーヒーの味わいを、大きく支えている大切な要素だと思うのです。

 

あなたの目の前にあるコーヒー。
飲み込んだあと、口の中で、どんなふうに味わいが広がっていますか。

 

(文:横井 力)

 

☆ 次回は3/13(金)の投稿です。