「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第12話
報われるからやる、ではない

正直に言えば、最初から迷いがなかったわけではありません。
売れること。
認められること。
すごいな、と言われること、思われること。
そういう気持ちが、まったくなかったとは言えない。
でも、それだけを支えに続けられるほど、自分は器用でも、強くもありませんでした。
気づけば、
誰かにちゃんと伝えたい、ちゃんと届けたい、その思いだけが、手元に残っていました。
報われるかどうかは、わからない。
売れるかどうかも、確信はない。
それでも、やめようとは思わなかった。
理由を探していたわけでもなく、見返りを期待していたわけでもありません。
ただ、伝えたいものがあった。それだけです。
続けてきた理由を説明しようとすると、うまく言葉にならない部分が残ります。
けれど、条件をつけずに誰かを思う気持ちや、損得を計算しないまま手を動かす感覚は、確かに、自分の中に根を張っていきました。
それが誰かの役に立ったかどうかは、正直、わかりません。でも、消えずに残ったものがある。
気づけばそれは、自分を支え、ときどき誰かを支える、小さな燈のようなものになっていました。
もし、自分の行いや佇まいが、誰かの心をほんの少しでも癒やし、救いにつながることがもしあるなら。
それ以上、望むことはありません。
(文と写真:横井 力)
☆ 次回は3/18(水)の投稿です。

