「コーヒー」と生きる〜そして、一杯の向こう側〜第26話

心を開くということは「受け継がれる関係」をつくること

 

人と人との関係は、その場で完結するものではないのかもしれません。
どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ形を整えても、本当に残るものは、もっと静かなところにある。

 

時間をかけて積み重なったもの。
交わした想い。
共に過ごした空気。
そういったものが、あとになって、ゆっくりと形を持ち始める。

 

振り返ると、大切にしてきたものが、そのまま手元に残るとは限りませんでした。
守りたかったものが、守りきれなかったこともあります。

 

それでも、想いまで消えてしまうわけではなかった。

 

ある日、それを受け取りたいと言ってくれる人が現れました。

 

自分では繋ぎきれなかったものが、誰かの手の中で、もう一度動き出す。
そんな出来事に触れたとき、人と人の関係は、時間を越えて続いていくものなのだと感じました。

 

その関係は、契約や条件ではつくれない。
心を開き、信頼を重ねてきた先にだけ、静かに生まれてくるものだと思います。

 

人となりに触れ、安心が生まれ、やがて関係が受け継がれていく。

 

すぐに形にならなくてもいい。目に見えなくてもいい。
それでも確かに、どこかで繋がっていく。
心を開くということは、“今”のためだけではなく、“その先”に残る関係をつくることなのかもしれません。

 

今日もまた、その一歩を、静かに積み重ねていきたいと思います。

 

(文と写真:横井 力)