おしえて!かねごん先生 第9回「春を健やかに迎える食事って?」

Agtスタッフで、管理栄養士でもある“かねごん”先生に、体と栄養のことについて教えてもらうコーナー。今回は、陰陽五行の考えをベースに、春を健やかに迎えるための食材や食事について教えてもらいます。icon by iconpon.com

編集部/3月に入りましたね。本州だとポカポカ陽気の時期だと思いますが、私たちが暮らす北海道は突然雪が降ってマイナス気温になったり、かと思ったらプラス気温で一気に雪解けが進んだりと寒暖差が激しいですよね。この時期に積極的に取ると良い食材などはあるのですか?

かねごん/そうですね。季節によって気温や環境が変わるように、私たちの体も変化します。身体は食べるものからできていますから、バランスを整えるためには、季節ごとで摂取したい食材などはあります。

現代は便利な社会になりましたが、自然のリズムとはかけ離れた暮らし方になっていますよね。今は、季節を問わず一年中同じ食材が手に入り、いつでもすぐに調理済みの同じものを食べることができますが、ずっと昔は、自然に寄り添い生活し、食生活もそのときに取れるものを食べていたと思います。量も必要な分しか食べていなかったと思います。昔の人は、自分の体の声をきちんとキャッチできていたのだろうなと考えるときがあります。

東洋医学や陰陽五行の世界では、宇宙や自然のリズムに沿った考え方を暮らしや食事に取り入れています。万物は循環していくという考えで、陰から陽へ、陽から陰へ絶えず徐々に変化すると考えられています。いきなり変化するのではなく、段階を経て変化するとされ、4つの相に分けられます。

編集部/4つの相ですか?

かねごん/そうです。1日でいえば朝昼夕版、1年でいえば春夏秋冬。人間も青年期、壮年期、熟年期、老年期の4つの相に分けられます。この四相を循環しながら発展していくのが宇宙のリズムといわれています。

編集部/循環していくんですね。

かねごん/はい。この循環が滞るとエネルギーの流れが滞ることになるので、バランスを崩してしまいます。人間の体も血液が滞ると病気になってしまうのと同じです。

編集部/なるほど。流れを良くすることが大事なのですね。

かねごん/人間の体内では、エネルギーがそれぞれの臓器で渦を巻きながら5つの流れで循環しています。

編集部/5つですか?

かねごん/はい、そうです。これが五行のエネルギーの循環です。

編集部/四相の次は五行なんですね。

かねごん/四相の変化を支えるのが、場のエネルギーといわれていて、大地のエネルギーにあたります。場のエネルギーを加えて五行ということになります。春夏秋冬に、季節の変わり目にあたる「土用」が入ります。

編集部/土用の丑の日! うなぎ食べる日ですよね。

かねごん/(笑)。土用は、天地の気が乱れやすい時期で、体調管理が大事と言われています。うなぎを食べるのもスタミナをつけるためということですね。
さて、木火土金水というのは聞いたことありますか?

編集部/はい、五元素ですよね。

かねごん/この五元素が宇宙を構成しているとされ、互いにバランス良く循環することが大事といわれています。人間の内臓も5つの要素から成り立っていて、五元素を五臓にあてはめると、木が肝臓、火が心臓、土が脾臓(膵臓)、金は肺、水は腎臓となります。この五臓が互いにバランスを取ることで健康が保たれます。

五行のエネルギーの循環は、春から始まります。前置きが長くなってしまいましたが、ここから春の食事の話に入っていきますね。

万物が芽吹く春に位置する五元素は、木。五臓でいうと肝臓(肝)になります。東洋医学でいう「肝」は、感情と体のバランス調整にも関係し、人間の成長を支える自律神経系を司っています。植物の多くは、冬の間に根に集めた養分を勢いよく芽吹かせます。「肝が高ぶる」ということになるのですが、この高ぶりを抑えるのが茎や葉といわれています。人間の体も、春先になると冬に蓄積した脂肪が一気に血液中に溶け出し、体の衣替えが行われます。肝の働きが悪いと血液の浄化が追い付かず不調をきたしてしまいます。

また、肝の働きが悪いと自律神経が乱れ、体調不良を引き起こすことがあります。春になると落ち着かない、そわそわする、うつ的になるという人は、自律神経が乱れている、「肝」が疲れているというサインです。肝の働きが滞ると、血液の浄化、循環が進まず、脳に血液の渋滞が起こり、「怒り」が出やすくなるともいわれています。イライラしたり、ヒステリー気味になったりしているときは、肝の機能が弱っているということです。脂っこい料理や菓子、添加物が多く入った加工食品を多く摂取していると、血がどろどろになり、肝に毒をため込んでしまいます。肝を整える食材を取り入れることで健やかでいられます。

編集部/なるほど。そういう繋がりがあるのですね。では、具体的にどのようなものを摂取すればいいですか?

かねごん/春の旬の食材である、菜の花や山菜などがおすすめです。ヨモギやフキ、たらの芽などは、肝を整えて生命力をもたらしてくれます。また、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富なので、肝にたまった汚れを排泄してくれます。冬の間に体内にたまった老廃物も一緒にデトックスできます。山菜が手に入らないという人は、緑黄色野菜もおすすめです。

また、肝が弱ると酸味を美味しく感じられます。梅干しや梅酢などがいいですね。疲労回復効果もあります。あとは、味噌や醤油、麹を使った発酵食品がおすすめです。新陳代謝を高め、抗酸化作用もあり、免疫力アップにもつながりますし、肝の解毒や分解作用を促してくれます。

編集部/Agtの春の新商品は、梅マヨのコールスローとか、発酵食品をたくさん使ったこめサン®「発酵キンパ」、塩麹の生わかめスープなどでしたよね? 菜の花のこめサン®もありましたね!

かねごん/はい、「肝」の働きを食からサポートできるようなメニューになっています! ぜひ味わってもらえたらと思います。

編集部/そうですね。また次回、日々の食生活で役立つお話を教えてください!

 

参考文献/「マワリテメクル小宇宙 暮らしに活かす陰陽五行」岡野賢二(ムスビの会出版部)