おしえて!かねごん先生 第2回「腸と免疫の関係について」

Agtスタッフで、管理栄養士でもある“かねごん”先生に、体と栄養のことについて教えてもらうコーナー。2回目は、腸と免疫の関係について教えてもらいました!

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編集部/2回目の「おしえて!かねごん先生」ですが、前回は「免疫」「免疫システム」についてでした。最後に「免疫力の70%は腸で作られている」ということを教えてもらって終わったのですが、今回はその続きで、腸と免疫の関係について教えてください。

かねごん/はい! 分かりました。腸と免疫がどう関係しているかという点からお話します。まず、腸の役割から説明しましょう。

私たちは、食べ物から生命維持に欠かせない栄養を摂取しています。体内に取り入れた食べ物は、消化管を通過する際に小さく分解され、途中で必要な栄養素を吸収、不要なものは排泄されます。この栄養素を吸収する場所が腸(小腸)になります。腸では、食べ物の最終消化と腸内細菌による分解が行われ、必要な栄養分を吸収します。さらに、不要なものや毒素を便として排泄させるのも腸(大腸)の役割です。

編集部/あらためてそうやって腸の働きを聞くだけで、とても腸が大切に思えてきました。食べたものを、体内に取り入れるための入り口が腸っていうことですよね?

かねごん/はい、そうです。今回のテーマにも関係してくるのですが、腸には全身の免疫細胞の7割が集中していて、免疫機能があるとされています。これについては1960年代から研究が進められてきたようです。

食べたものと一緒に外界にあるウイルスや病原菌が体内に入ってきたら、免疫機能が働き、これらを識別して排除します。腸内の免疫細胞は、日々ウイルスや細菌と戦うための訓練を腸で行っています。人体にとって有害で攻撃すべき「敵」の特徴を学んでおり、訓練をした免疫細胞は血液にのって全身に運ばれ、体のあちこちでウイルスや細菌と戦うのです。

編集部/戦うための訓練というのはイメージですよね?(笑)

かねごん/そうです(笑)、イメージで分かりやすく言っただけです。

編集部/体の中にウイルスが侵入してきたら、訓練を受けた免疫細胞たちが出動する感じ?

かねごん/はい、そういうことです。ですから、腸内の環境というのがとても大切になります。

腸内細菌研究の世界的権威でもある服部正平さんによると、日本人とほかの海外11か国の人たちの細菌叢(そう)を比べると国ごとに特徴があるそうです。この研究により、日本人の腸内細菌の中には、食物繊維を分解する細菌がほかの国の人より多いことが分かりました。この腸内細菌が食物繊維を分解し、酪酸という短鎖脂肪酸を産出。実は、この酪酸が腸を動かすエネルギーとなっており、免疫力をコントロールする働きをしているといわれています。

かつての日本人は、食物繊維が豊富な玄米とみそ汁をベースにした食事が中心でした。日本人の腸と腸内細菌は長い年月をかけてこの食事に対応したものになっていました。しかし、戦後の食生活が急激に欧米化し、食物繊維の摂取量が減少。これまで築き上げてきた腸と腸内細菌の関係性がこれに対応しきれずに、アレルギーや自己免疫疾患といった「免疫の暴走」を増加させる一因になっている可能性が研究者の間でも注目され始めています。

編集部/なるほど。腸内細菌がしっかり働ける腸内環境が整わないと、免疫細胞の訓練ができないですよね。よく聞く「腸内フローラ」というのは、この腸内細菌に関係あるのでしょうか?

かねごん/はい。小腸の終わりから大腸にかけて、腸壁に多様な腸内細菌が種類ごとに集まって生息しています。このまとまっている様子が、草花が群生しているお花畑のように見えることから「フローラ」(=お花畑)を付けて、「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。

編集部/ありがとうございます。では、次回はこの腸内細菌や腸内フローラと免疫の関係についてもう少し詳しく教えてもらうことにしましょう!