MOKUな人 Vol.7 高山裕將さん(高山農園)
「自然の中で営む以上、環境に配慮した農業をしたい」
「MOKUな人」は、MOKUと関わりのある方やマガジンコンセプトに合った活動をされている方たちを紹介していくコーナーです。10月は先月に引き続き、MOKUの店「Agt」で販売している自然栽培米のお米を作ってくださっている農家の方々を紹介。7回目は、高山農園(新十津川町)の高山裕將さんです。9月に取材に伺ってきました。
自然環境の仕事をしてきたから見えるもの
新十津川町にある高山農園は、高山裕將さんの高祖父(ひいひいおじいさん)が新潟から入植したのがスタート。高山さんの父親が農業に従事し、高山さん自身は大学を卒業後、札幌でサラリーマンとして働いていました。「もともと自然や生き物が好きで、環境問題に関心があり、大学では環境デザインを学んでいました。その流れで、建設コンサルの会社で自然環境を調べる仕事に就きました」。
2012年に父親が倒れたのを機に、翌年から跡を継ぐことに。「環境の仕事をしていたこともあって、当時は漠然とでしたが農業をやるなら無農薬だなと思っていました」。とはいえ、農業の仕事ははじめて。まずは1年間、父親に習いながら慣行栽培を行いました。「でも、やっぱり『おかしいな』と思う部分がたくさんありました。農業は自然の中で行い、自然の恵みをいただくもの。でも、農薬を使い、虫を殺す。すごく工業的だと感じました」。農薬や化学肥料を使うことは、環境破壊の最前線なのではないか?という疑問もあったと言います。「コンサル会社にいた頃、魚の調査にもよく行っていました。漁師は海の資源を守るために森を大切にしようと活動している人が多くいたのに、同じ一次産業である稲作地帯の農家は生き物を敵視している人が多いという印象もあり、農家としての在り方も考えさせられました」。
スタートから7年、毎年がチャレンジ
父親に自然栽培に取り組みたいと話した際、反対はされませんでしたが、「本当にできるの?」という感じの反応だったと振り返ります。周りで自然栽培をやっている人がいなかったため、まずは奇跡のりんごで知られる木村秋則さんの本を読み、何かヒントが得られないかと札幌で自然栽培米を扱っているAgtを訪れます。そこで、4回目のMOKUな人に登場した桧山さんに出会い、アドバイスなどを受け、自然栽培米作りに挑戦。まずは試しに小さな田んぼでやってみると、うまく栽培ができ、父親からも「できそうなら続けていいよ」とOKが出ます。
それから7年、「毎年実験をしているような感じです。うまくいく、いかないがあるのも面白いと思いながら、一歩一歩進んでいる感じですね」と話します。本州で自然栽培を成功させている人の方法で栽培しても、土の質や気候が異なれば、必ずしも同じようにうまくいくわけではありません。「うちの田んぼにはこれが向いているとか、ようやく少しずつ見えてきたかなというところです」。実際、田んぼの土が変わってきて、「生き物と共存できるようになった」と話します。ゆくゆくは、無農薬栽培の田んぼや畑の面積を大きくし、全面無農薬でやっていきたいと考えています。
自然栽培に興味関心を持つ人たちとともに
さらに、無農薬や有機栽培に興味・関心がある人たちに声をかけられることが増え、交流が広がっているそう。「そうした人たちと一緒にいろいろできるようになって楽しいですね」と高山さん。有機栽培の酒米作りを始めたのも、そうした集まりがきっかけでした。「札幌で有機の酒米でお酒を造りたいという人たちが集まって、ずっと企画をしていて。うちで彗星という酒米を作っています。今年やっと日本酒ができあがりました」。上川大雪酒造が帯広畜産大学内に作った碧雲蔵で醸造した特別純米酒がそれ。元々日本酒好きで、いつか自分のお米で日本酒を造ってみたいと考えていた高山さんにとって、これは何よりもうれしいことだったようです。
さて、高山農園の自然栽培「ななつぼし」の新米は、今月からAgtの店頭、オンラインショップに登場。「今年は去年より出来がいい気がします」と高山さん。これは楽しみですね!