ボーヴィラージュ子育てインタビュー vol.1 ちいさなえほんや ひだまり 店主 青田正徳さん

子どもを膝の上に乗せて一緒にページをめくる、ベッドで横になりながら優しい声で読み聞かせる…。絵本と子どもが一緒のシーンは、なんとも温かいものです。できるなら、豊かな感受性を育む幼少期に良質な絵本を子どもに読んであげたいですよね。子育てインタビューvol.1に登場してもらうのは、25周年を迎える札幌の絵本専門店「ちいさなえほんや ひだまり」の青田正徳さん。子育てと絵本について伺ったお話を2回に分けて紹介します。

優れた絵本とは? 青田流絵本選びの3つのポイント

ひだまり店主の青田正徳さん

 

札幌市手稲区にある一軒家が「ちいさなえほんや ひだまり」です。玄関を開けると、青田さんが笑顔で迎えてくれます。青田さんは児童書の販売代理店に勤務していましたが、当時札幌で唯一の絵本専門店が閉店になると聞き、「良質な絵本を子どもたちに届ける場所がなくなってしまう」と感じ、25年前に「ひだまり」をオープンさせました。

年間1000冊ほどの新刊が出るという絵本。「そのうち2割しか良質と呼べる絵本はありません」と青田さん。「ひだまり」には、約2500冊の絵本が並んでいますが、どれも青田さんが1冊1冊丁寧に選んだ良書ばかり。「お客さん一人ひとりに合った絵本を選ぶのが専門店の役割。同じ値段の絵本を選ぶなら、クオリティーの高いものを手にしてほしいし、それを伝えていきたい」と話します。

「絵本は、子どもが初めて出合う文学と美術。最初にすぐれた芸術作品に触れることはとても大切です」。とはいえ、どのような絵本を選べばいいのか分からないという人も多いはず。青田さんが選ぶ基準として考えている3つのポイントを教えてもらいました。

  • オリジナリティ(独創性)
  • リアリティ(真実性)
  • ヒューマニティー(人間性)

「この3つが揃っている絵本が理想的です。想像力をかきたてる独創的なものがあり、現実的にありそうなもので、どこかほっこりしたり、心地よさのある人間味を感じられるか。そこをよく考えて選ぶといいと思います。ただ楽しい、面白いだけでなく、読み終わったあとにほっこりとした気持ちになれるかが大事です」と青田さん。つい、瞬間的な面白さだけに目が行きがちですが、読後感も大事であるということにハッとさせられます。

子どもと絵本を共有する読み聞かせは愛に包まれた時間

青田さんが厳選した絵本が並ぶ店内

 

次に読み聞かせについて伺いました。絵本は、字がまだ読めない子どものための本だと思いがちですが、年齢は関係ないそう。特に読み聞かせは、絵を見ながら耳で物語を聞くことで、描かれている絵を想像で動かし、脳を活性化させているとか。リラックス効果もあるようで、近年大人のための絵本普及活動などが行われていることからも年齢問わずのジャンルになりつつあるのかもしれません。

子どもへの読み聞かせについて青田さんは、「読み聞かせは、子どもにとって読み手の声と愛情に包まれた幸せな時間です。親御さんたちには、読んであげることができることを喜びとして感じてもらいたい」と話します。読む大人と読んでもらう子どもが、絵本と時間をシェアしているという考え方はとても素敵なこと。忙しいと「読んでやっている」と上からになりがちですが、共有していると思えば、その時間がとても愛おしく感じますよね。例えば、戦後日本で一番売れている絵本「いない いない ばあ」(文/松谷みよ子、絵/瀬川康男)は、「ばあ」という言葉だけで赤ちゃんが笑う絵本。「その『ばあ』ひとつにも赤ちゃんは愛情を感じているのですよ」と青田さん。

また、絵本の読み聞かせを通じて、子どもたちは母国語の言葉の響き、リズムを感じ取り、体得していきます。「親御さんは子どもにとって大切な母国語の語り手というわけです」と青田さん。ただ読むというよりは、語るという感覚だと言います。

5歳までに出合ってほしい5冊の絵本

なかなか絵本を選ぶのが難しいという親御さんに向けて、5歳までに子どもたちに出合ってもらいたい絵本を5冊教えてもらいました。

 

 

 

 

「いない いない ばあ」(文/松谷みよ子、絵/瀬川康男、童心社)

「くだもの」(作/平山和子、福音館書店)

「はらぺこあおむし」(作・絵/エリック・カール、訳/もりひさし、偕成社)

「あおくんときいろちゃん」(作/レオ・レオニ、訳/藤田圭雄、至光社)

「ももたろう」(文/松居直、絵/赤羽末吉、福音館書店)

これらは、青田さんのお店・ひだまり、ボビラ堂でも扱っています。どうしてこの5冊?と思った人は、実際にひだまりへ行って青田さんに話を聞くのもおすすめ。専門店ならではの青田さんの絵本の話は、いろいろな子育て情報が溢れ、親も迷走しがちな昨今、ひとつの道しるべになることでしょう。

青田さんのインタビューは次回に続きます。次回は「ももたろう」をはじめ、昔話の大切さや青田さんが勧める子育て3部作についてです。

ちいさなえほんや ひだまり
札幌市手稲区新発寒6条5丁目14-3
TEL011-695-2120
営業時間/金・土・日・月・祝日 10:00~19:00


<取材・文/中村昭子>

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