MOKUな人 Vol.6 太田拓寿さん(アグリシステム太田農園)
「こういう環境で自然栽培の米を作っていることを知ってもらいたい」
「MOKUな人」は、MOKUと関わりのある方やマガジンコンセプトに合った活動をされている方たちを紹介していくコーナーです。10月は先月に引き続き、MOKUの店「Agt」で販売している自然栽培米のお米を作ってくださっている農家の方々を紹介。6回目は、アグリシステム太田農園(芦別市)の太田拓寿さんです。9月に取材に伺ってきました。
大学に進学してから農業に携わることを決心
北海道のちょうど真ん中あたりに位置する芦別市。「星の降る里」とネーミングされるだけあり、のどかで、遮るものがない自然豊かなエリアです。この芦別市で農業を営んでいるのが、「アグリシステム太田農園」の太田拓寿さん。明治時代に曽祖父が入植し、太田さんが4代目となります。現在は、太田さんの父親・良雄さん、弟の啓允さんらと一緒に農作業にあたっています。
太田さんは4人兄弟の長男でしたが、最初から跡を継ごうと思っていたわけではなかったそう。「食品には興味ありましたが、弟が跡を継ぐかなと思っていました」。そんな太田さんが農業を意識するようになったのは、通っていた大学で農業経済のゼミに入ってから。「ほかの大学と一緒に農業に関する研究をしたり、いろいろな農家さんを訪ねたりしているうちに、農業へ意識がシフトしていきました。また、ゼミの仲間から『実家が農家だなんて羨ましい』『純粋に農業という仕事はいいね』と言われ、自分は恵まれているのだと分かり、それならば…と」。ちょうど、太田さんが大学生のときに、父親の良雄さんが法人化していたこともあり、「就職するという感じでした」と話します。
地力を上げるために田んぼをローテーション
良雄さんは、「若いうちにいろいろ失敗して経験したほうがいいよ」というタイプ。「父もいろいろやってきているようで(笑)、僕もたくさんチャレンジさせてもらいました。自然栽培の米作りも、田んぼ1枚くらいからならやってみてもいいよと言ってくれたのが最初でした」。良雄さんが30年以上有機栽培の米作りを行っていたこともあり、自然栽培を始める際のハードルは高くなかったと言います。また、近所の方が離農したあとを引き継ぐなど、法人化してからは田んぼの面積が広がり、現在は東京ドーム8個分の圃場を有しています。「ほかの農家さんと隣接しない、切り離されている状況も自然栽培を行うには良かったと思います」。
自然栽培米を始めて、13年目。「土や水の力で稲を育てていくので、いくら管理を徹底しても収量が読めない部分もあります。また、自然栽培を同じ田んぼでずっと続けていくと、土の力が落ちて収量も下がっていくので、うちでは田んぼをローテーションさせる形で1年間休耕させ、地力をあげるように工夫しています」。土の力を蓄えることで、稲の生育も安定していくそうです。
環境を意識し、消費者とのつながりも大事に
自然栽培米のほか、環境を意識しながら継続的に続けていける有機栽培米や減農薬米も作っている太田さん。「こちらもこちらでいろいろチャレンジしながらやっていきたいと思っています」。減農薬のお米に関しては、地元の減農薬栽培グループで、日本GAP協会の「JGAP認証」を取得し、持続可能な農場経営に取り組んでいるとして高い評価を得ました。また、グリーンツーリズムやファームステイなどにも関心が高く、「消費者の方たちとのつながりも大事にしていきたいと思っています」と話します。地元の小学生や修学旅行生などの農業体験の受け入れも行っています。
最後に、「これからもお米にこだわって作っていきたいですね。そして、たくさんの人にこういう環境でお米を作っているということを知ってもらいたいですね」と、山に囲まれた広々とした圃場を見つめながら話してくれました。
太田さんのところは例年「ゆめぴりか」の自然栽培米を作っていましたが、今年は「ななつぼし」に挑戦。太田さんのお米は、Agtの店頭、オンラインショップからも購入できます(新米は今月から販売)。