MOKUな人 Vol.2  山本将志郎さん(「梅ボーイズ」リーダー)

「梅文化のバトンを繋いでいきたい」

「MOKUな人」は、MOKUと関わりのある方やマガジンコンセプトに合った活動をされている方たちを紹介していくコーナーです。2回目は、MOKUの店「Agt」で販売している梅干しを作っている株式会社うめひかりの山本将志郎さんです。梅文化普及のため、「梅ボーイズ」というブランド名で活動も行っています。

本当の梅干しが消えてしまうことへの危機感

山本さんは、和歌山県のみなべ町出身。梅の生産量日本一を誇る町で、最高品種と呼ばれる南高梅の発祥の地でもあります。山本さんの実家も5代続く梅農家で、現在は山本さんのお兄さんが農園を切り盛りしています。

幼い頃から、毎日のように梅干しを食べて育った山本さんですが、梅農家の跡を継ぐ気はまったくなかったそう。地元の高校を卒業後、北海道大学の薬学部へ進学し、がんの新薬研究に取り組んでいました。

そんな山本さんが、梅干し作りに携わろうと思ったのは、帰省時に農園の手伝いをしているうちに、「梅干し」の現状に危機感を覚えたからでした。「僕は、梅と塩だけで漬けた梅干しを食べて育ちました。それは梅農家がこだわって作った梅の味がしっかり伝わるものでした。しかし、今は甘めの調味液に漬けられたものが主流で、本当の梅干しがこのままだと消えてしまうと思いました」。市販の梅干しは、裏の商品ラベルに「調味梅干」と記載されているものが大半。塩抜きをして、はちみつや鰹節、調味液で味付けをしているものがこれらになります。梅と塩、そこに紫蘇を加えただけの「梅干」と表記されているものは、実は少数です。また、農園の跡を継いだお兄さんが、「手をかけて良い梅を作っても、結局は調味液で均一の味になってしまう。梅農家のこだわりは生かされない」とつぶやいた言葉も山本さんを突き動かしました。

大学院を中退し、梅ボーイズとしての活動に注力

大学で勉強をする傍ら、山本さんは梅干しの研究を始めます。日本中の評判の良い梅干しを取り寄せてデータを取り、梅の種類や熟成期間などを比較。2018年に納得のいく梅干しが完成し、販売を開始することになります。

大学院を中退し、無添加のすっぱい梅干しのファンを増やしたいという想いで、「梅ボーイズ」と描いたピンクの軽トラックで日本一周を始めます。全国各地で梅の販売やイベントなどを行い、「本当の梅干し」の魅力を伝えます。「若い人には新鮮な味、年配の方たちには懐かしい味と言われました。また、逆に小さなお子さんからはすっぱいけれど美味しい!と言われて嬉しかったです」。中には、塩と梅だけのシンプルなこの梅干しを探していたと喜ばれたこともあったそう。

現在は、札幌と実家のある和歌山・みなべ町を往来しながら、梅干しの販売を行い、美味しい梅干し作りや梅干しの活用法などの研究もしています。「薬学部で学んだことや経験、研究者としてやってきたことは、梅干し作りにも役立っています。また、実際に梅の研究をしている方たちが発表した効能効果を、消費者の方たちに分かりやすく伝えるのも自分の役目かなと思っています」。

 

山本さんが家族と作っている梅干しは、6月に収穫した完熟の南高梅を使用。完熟梅を使うことで、仕上がりの柔らかさが異なるそう。収穫と同時に、ミネラルたっぷりの天日塩で塩漬けし、1カ月ほど経って、梅酢があがってきたら漬け込みは完了。だいたい7月後半から、天日で干し始め、しっかり干したあとは1年間熟成させます。「1年寝かせることで、塩と梅の実がなじんでまろやかになります」。また、紫蘇梅で用いる紫蘇は、いろいろ試した結果、色が鮮やかでフルーティーな徳島産を用いています。

 

こだわりの梅干し、そして梅酢の素晴らしさを伝えたい

現在は、梅のエキスが凝縮されている梅酢も知ってもらいたいと普及に力を入れています。「ミネラルたっぷりで、クエン酸も豊富なので、水で割れば甘くないスポーツドリンクとして飲むことができます。熱中症対策にもおすすめです。ピクルスや揚げ物の下味など、料理でもいろいろ使うことができます」。調理師である山本さんの妹さんが、梅酢を使ったレシピをインスタ(@umezu_world)でも紹介。

「梅ボーイズとして活動する根っこの部分には、梅の文化を未来に繋いでいきたいという想いがあります。海外にも梅干しの素晴らしさを伝えたいですね。そして、栽培からこだわって作られた農作物そのものが、きちんと評価される仕組み作りをしていきたいと考えています」と最後に語ってくれました。

梅ボーイズの梅干しや梅酢は、オンラインショップ、Agt店舗でも扱っています。
梅ボーイズのホームページはこちら。https://umenokuni.com/